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FeTe論文online
FeTeの一軸応力中X線回折&電気抵抗測定の論文がonlineになった。

  • Two kinds of in-plane resistivity anisotropy in Fe1+δTe (δ=0.09) as seen via synchrotron radiation x-ray diffraction and in-situ resistivity measurements
  • T. Nakajima et al.
  • Phys. Rev. B 91, 205125 (2015)

大学を離れて1年以上経ってしまったけど、この仕事は大学で助教をやっていた時期の一番最後に取り組んだもの。

論文になる順番はR研で始めたBCGO論文のあとになってしまったけど、この論文のテーマであるFeTeは自分の出身研究室でずっと研究されていた物質(CFO,CNO)を以外で、最初に取り組んだ物質だった。
同じ学科の研究室の助教の先生との共同研究で始めた物質だったので、もちろん全く新しい物質という訳ではなかったけど。

その物質に関わることを一から勉強して、申請書を書いてPFのビームタイムを獲得して、2回のビームタイム+研究室でのバルク測定を積み重ねて学会発表、そしてなんとか論文発表。学会発表から論文までのあいだに自分の所属が変わってバタバタしたこともあって、お蔵入りの危機もあったのだけど、なんとか無事最後まで完走することができた。

何より重要だったのは、この研究はうちの研究室の元々のテーマからはやや外れるのだけど、先生に「このような研究をやってみたい」とお願いして自分のプロジェクトとして立ち上げたということ。

内容としては、先行研究で報告されていた結晶構造と電子状態の異方性の相関をより丁寧に調べた仕事ということで、それほど派手さは無いのだけど、この仕事に取り組む中で自分が得た経験、培った技術を考えると、自分にとってとても意味のある研究だった。自分が長年居た研究室を離れる時期にこの研究ができたのは、本当に良いタイミングだったし、良いターニングポイントになったと思う。

これで大学所属時代の論文はほぼ出し切ったので、次は今の所属として出す論文も頑張らないと。
by nt-neutron | 2015-05-23 23:55 | 研究日誌
SPring-8、論文、読書
J-PARC実験が終わった翌週はSPring-8へ。
今回は初めてPowderの実験だった。共同研究者の方が作成した一連の試料について、元素置換による構造の変化を明らかにするのが目的。そのため、大量の試料をひたすらとっかえひっかえ測る実験だった。

さすがSPring-8のビームは強くて、測定は2分で終わってしまう。(これ以上当ててもIPがサチってしまう。)
しかしその後IPの減衰を落ち着かせるために20分以上待たなくてはいけない、それに加えて読み出しにもいくらか時間がかかり、試料をキャピラリーに詰めるのにも時間がかかるので、2枚のIPを取り替えながら使っても、1試料20分程度かかってしまった。

ビームタイムは24時間だったのだけど、データはたくさん取れて、帰ってからはひたすらRietveld解析の日々。
この手の解析は、R研に来てから粉末XRD装置の装置担当になってから、ある程度経験を積むことができたおかげで割とスムーズにこなすことができた。粉末回折をメインでやっているプロの方に比べればまだまだだと思うのだけど、複数の相が混在する解析もある程度こなせるようになってきた。
4月末あたりに共同研究者に結果を送ってひとまず一段落。


4月後半からは抱えている論文をなんとか進めようと頑張った。。
今回の論文は、自分が途中から加わったプロジェクトの実験結果なので、そのモチベーションをつかまえて、噛み砕いて自分の文章として吐き出すのはなかなかしんどい。でも、今の研究所のようなところに所属している以上、100%自分だけのプロジェクトしか論文かけませんってのじゃダメだろうし、今月中には初稿を仕上げることを目標に取り組んでみる。


先日本屋に立ち寄ったら、理工系書籍のフロアに大栗博司先生の「重力とは何か」「強い力と弱い力」が置いてあった。

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

大栗 博司 / 幻冬舎


強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く

大栗博司 / 幻冬舎


前からWeb上の書評を見て気になっていたので、この機会に買ってみることにした。
どちらも凄く読みやすく書かれていて、あっという間に読み終わってしまった。大栗先生の語り口は非常に魅力的で、読んでいる方も頭の中に内容が順序良く収まってくる感じ。
「重力とは何か」の方は、身近な視点からの「重力の7不思議」に始まって、相対論、そこからブラックホールの話題へと流れるように進み、途中に量子力学の話題も挟んで、最後に大栗先生の専門である超弦理論へとつながって行く。
著者自身が第一線の研究者ということで、読者の興味を引っ張ってきた先に自分達が発表した理論を紹介する展開は凄く格好良くて憧れてしまう。(小さなブラックホールの計算は「トポロジカルな弦理論」で!という節とか)
自分がその物理に重要な貢献もしつつ、一般向けの解説が書けるというのは、その物理に対する深い理解はもちろん、それを一般向けに噛み砕く表現力も持っていないとできないことだと思うので、本当に凄いと思う。


ただ、冒頭で重力の「弱さ」を説明しているところですこし引っかかってしまった。
最初にクリップの上に磁石をかざすと、重力に「逆らって」磁石にくっつくという現象を紹介する部分で、具体的に引用すると

<引用>
重力は重い物体ほど強いのですが、それだけの重さを持つ地球の重力よりも、ほんの数グラムしかない小さな磁石の引力の方が強いということです。ですから、もし地球と同じ重さの磁石が隣にあったら、地上の鉄はみんなそちらに吸い寄せられてしまうでしょう。


という部分。
ここで引っかかってしまったのは、以前に自分がこれと似たような内容を大学1年生に教える機会があって、そこでも悩んでしまったことがあったから。

まだ大学の助教をやっていた当時、うちのボスの代講で1年生向けの電磁気学入門の講義をやったことがある。
100人以上を相手にする講義だったので緊張したのだけど、講義のアウトラインはボスがすでに作った資料があって、それに沿って内容を作れば良い感じだった。
そのアウトラインの中に「まずは実際に重力の大きさを計算させて、電磁気学的な力との差を実感させる」というものがあった。具体的には、地球と太陽の間に働く重力を万有引力の式に入れて計算させてみること、さらにそれを電磁気力と比べること、と書かれてあった。
結果としては「ね、重力って弱いでしょ」という結論に落ち着くことが期待されているものだったと思うのだけど、果たしてどのような比較をすれば「フェアな」比較になるのか、考えてしまった。(実際そこは自分の講義でもダイレクトに電磁気学と比較するようなことはやらず、別の例題を使った気がする。陽子と電子が原子を構成していることに関しても、電子の質量と電荷というパラメータをがある上で、両者の「力」の強弱をどのように論じるべきか、悩んでしまったのだった。)


で、大栗先生の本の話に戻る。僕が違和感があった点はいくつかあって、まず、磁石に働く力と万有引力を比べることはフェアなのかという点。でもまぁこれは日常の感覚でよく使う例えだし、一般向けの解説書でこのような書き方をすることは僕も問題ないと思う。

あとは、「もし地球と同じ重さの磁石が隣にあったら」という点。磁力はその重さに比例する訳ではないので、これはちょっと誤解を招きそうだなぁと思った。僕が大学で学部生向けに磁化測定の実験を教えていた時には、反磁場補正とかで試料が出す磁化の大きさを計算する時には「単位質量あたりの磁化」ではなく「単位体積あたりの磁化」を使うんだよと教えていた。磁化の強さはその空間にどれだけの磁気モーメントがあるかが重要なので、質量で割っちゃダメというのがポイント。

あと、もう一つ大事な点として、磁力は簡単に足し算できないという点がある。
これも僕が大学で教えていた時に、磁化の強さの身近な例として、「健康器具で肩に貼るような磁石はだいたい1000ガウスぐらい、これ位の磁石だと安いのだけど、でも最先端の実験で使うのは10テスラ以上の超伝導磁石もあって、これはさっきの磁石の100倍くらい強いから、値段も1億円とかするんだよ。」という話をしたこともあった。その時にありがちなリアクションとして、「エレキバンの100倍だと、あまり凄そうに聞こえませんね。。」というもの。
たしかに、エレキバンを100個買ってきて100倍の磁場が出せれば、最新の実験装置に1億出すのも馬鹿らしい話。ただ、同じ磁石を100個持ってきても、磁場は100倍にならない。理由は上でも書いたように単位体積の磁気モーメントが問題になるので、磁石を隣に並べてもその強さは倍にならないから。そのため、超伝導磁石を使って大電流を流して強い磁場を発生させることになる。
大栗先生の話に出てきた「地球と同じ重さの磁石」というのがどのようなものを想定されたのかは分からないけど、我々が「磁石」と呼んでいる物質を大量にかき集めてきても、地球上の鉄を吸い寄せるのには苦労するだろうなと思った。


まぁでもこの辺に突っ込むのはちょっといちゃもんに近いかもしれない。
全体を通して、大学で授業をしていた頃のことを思い出しつつ、楽しく読めた本だった。
by nt-neutron | 2015-05-05 23:58 | 研究日誌


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某私大で助教を4年間勤めたあと、現在はR研でポスドク。専門は磁性・中性子散乱。
by nt-neutron
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