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カテゴリ:研究日誌( 410 )
1−4月
だいぶ間が空いてしまった。やってきたことを整理して書き留めておく。

1月
2月にJ-PARCでパルス電流+中性子小角散乱の実験があるので、それに向けて中性子用の試料に電流を流して抵抗値の変化を見る実験をひたすらやっていた。
(奇しくもこのパターンは去年の2、3月と同じ。去年は3月のANSTOでの同様の実験に向けて、2月にひたすら電気抵抗測定をしていた。)

年末に一度良い結果が出たのだけど、その後まったくそれが再現しない日々が続いて、電流パルスを打てども打てども期待した変化が観測されない苦しい日々が続いていた。(思えば去年も同じような理由で悩み続けていた。)
あるとき試料の位置がずれていて正しく磁場がかかっていないことが原因であると気づき、スティックの長さを再調整したところ、やっとそこそこもっともらしい結果が得られて中性子実験のめどが立った。こんな単純なミスで時間を無駄にしていたのかと自分に腹が立ったけど、とりあえず中性子実験が出来そうだという安堵感がそれに勝っていた。これが1月最終週だったと思う。


2月
1月に予備実験を続けていたJ-PARCのパルス電流実験は2月の中〜下旬。その前に2月前半はドイツFRM-IIでの小角散乱があった。今回は1年半前にやった実験の続編で、試料の質量を数倍にして、以前見えなかったシグナルを見に行こうというもの。こちらは狙い通りの成功実験だった。これは何よりたくさんの試料を合成して綺麗に並べた共同研究者さんの頑張りが全てと言って良いと思う。試料が良ければしっかりした結果が得られるという鉄則通りの実験だった。
実験前半に宿の近くのレストランでポーク・シュニッツェルを食べたのだけど、共同研究者の人と「最後までうまく行ったらビーフのシュニッツェルを食べましょう!」と約束して、見事ビーフを食べるに至った。

また、前回は磁場の制御が完全に手動だったので長いスキャンが組めなかったのだけど、今回はその点が改善していて温度も磁場も含めてマクロを組むことができた。最低限これだけ出来るようになると、次からもこの装置を使いたいと思えるようになるな。(しかしこれがJ-PARCの装置だとまだ出来なかったりする。うむむ。)


2月の後半は1月から準備してきたJ-PARCでの実験。
実験は装置の立ち上げも含めて1週間程度だったのだけど、出発前日あたりから体調がおかしかった。とにかく咳がひどくなり、やがて発熱。実験してるのもキツい状況になったのだけど、今回の実験は自分が倒れるとおしまいなのでなんとかやりくりするしかない。とりあえず、キューピーコーワゴールドと風邪薬の合わせ飲みで乗り切ることを決意した。途中、風邪薬が尽きてしまったので装置担当者のOさんに買い足しをお願いして、苦しみながらも最後まで実験を進めることができた。
自分の体調がぼろぼろなのとは裏腹に、実験自体は極めて順調。予備実験で条件出しをほぼ終えていただけあって、無駄無くデータをとることが出来た。


3月
J-PARCから帰ってきてからすぐに医者に行ったところ、まず疑われたのはインフルエンザで、その検査も受けた。しかし結果は陰性。とりあえず回りにインフルエンザウィルスをまき散らした訳ではないとで安心して、まずは自分の体力回復に努める。
しかしその後すぐにANSTO論文のRevisionの締切がやってきて、週末出かけた先からなんとか共同研究者に改訂原稿を配信し、改定期限前日に共著者からのコメントを集約してresubmit。

その後、3月はイベント尽くしだった。
長年職場で向かいの席だった同僚のMさんの送別会、その後、量子ビームサイエンスフェスタに日帰りで参加、そして大阪の物理学会へ。学会では古巣の発表を聞いて昔自分が取り組んでいたテーマを懐かしく思い出すなど。


4月上旬
4月の第一週からJ-PARCで反射率実験に参加させてもらった。中性子を長年やってきたけど、反射率は初めての実験だった。実験としては装置の性能を検証するのが第一の目的で、物理的な発見は無かったのだけどそれでも面白かった。来期はこれにプロポーザルを出してみようかなと思い、少しずつアイディアを練ってみることにした。うちの研究所ならではのテーマで、新しいコラボが生み出せるような機会になると良いな。来期の締切は6月上旬なので、それまでにじっくりfeasibility checkをして行きたい。




by nt-neutron | 2017-04-18 23:28 | 研究日誌 | Comments(0)
ORNL
4度目のORNLに来ている。

今回は初めてORNL guest houseをやめて、West Gate Lodgingに泊まってみた。

結果、すごく快適。guest houseの3倍くらいの広い部屋で、広いキッチンも付いて、値段はむしろ安い。
近さはどうしてもかなわないけど、落ち着くのは断然west gateの方(一泊税込みで53ドルくらい)。
今度からはこちらにしよう。

West Gate lodgingはその名の通りロッヂであってホテルではない。
なので、朝食は自分で用意する必要があるのだけど、そのためにwalmartに行ったところ、なんか店員が沢山いて客を整列させるための?ロープまで店内に張られていて物々しい雰囲気。なぜかおもちゃも大量に積んである。
こちらの研究者の方に聞いたところ、今日から感謝祭休暇で、特に今晩は日本で言うところの新年発売りのようなセールをやるものらしい。
言われてみれば、店員さん達も頭に飾りを付けたりなんか盛り上がっていた。


実験の方は昨日からスタート。試料はまたしてもhexaferrite。
今回は装置3台を使った実験で、先ずはWANDからスタート。
新しく装置担当者になったMatthias氏が手際よくセッティングしてくれたおかげで速攻で実験が軌道に乗った。彼は装置のことも非常に良く理解しているし、色々装置のアップグレードにも関わっている。しかもやたら親切で、電話くれればいつでも駆けつけるよと言ってくれている。
こうゆうひとが担当者だと、またこの装置を使いたくなるな。

ちょうどタイミングよく,去年のORNL実験の結果が今月に入ってPRBにacceptされ、editors' suggestionにもなったので、それを伝えたところJaimeも喜んでいた。
一応これで、これまで3回のORNL実験は全て論文になった。さて、今回はどうなるか。。試料のクオリティからしてもやや難しいかもしれないけど、なんとか有意義なデータを取って帰れるようにしたい。



さて、実験の合間をぬって、来週末の遠隔発表スライド等準備せねば。

by nt-neutron | 2016-11-25 10:15 | 研究日誌 | Comments(0)
9月中旬
物理学会@金沢大が終了。

自分の発表は可もなく不可もなく。
物理としての内容は自分でも面白いと思うのだけど、10分に詰め込むとどうしてもぎこちなくなってしまう。
物理学会の講演で、スライド中に色々アクションもつけながら流暢にしゃべりきっている人を見ると本当に尊敬する。どうやって練習してるんだろ、あれ。

聞く側で面白かったのは何と言ってもイジング型コンピュータのシンポジウム。今まで漫然と聞いていた「量子コンピューター」という単語がすごくよく分かるようになった気がする。
ハードとして量子性を使っていこうという方向性と、最適化問題に、統計力学、量子統計力学のモデルを使って行こうという方向性(両者はある意味同じ方向を目指しているのだけど)があることがよく分かった。
基礎から応用、さらには商業的なところまで同じセッションで語られるといのはなかなかない。そして何より取り組んでいる人たちの熱気を感じた。分野外だったけど行ってみて大正解のシンポだった。


学会から帰ってきてからは久々のバルク測定。
自作のスティックを久々に取り出して、試料をマウントして、さあ測定を開始しようかと思ったらヒーター線がショートしていた。
マンガニン線を50Ω分切って、ねじってねじってヒーター作成。その場でスティックに取り付けて、クライオスタットにマウント。とりあえず明日からこれで測定。


この7月、8月を乗り切った精神的な疲れが出てるなぁ。持ち直すにはちょっと時間が必要。
しばらくは低空飛行で乗り切ろう。


by nt-neutron | 2016-09-18 23:57 | 研究日誌 | Comments(0)
8月終了
色々考えることの多い一ヶ月だった。研究はまとめ中心で、新しい実験はあまり進まず。まぁこんな時期もあるか。

ORNL論文を投稿完了。
8月末に投稿する予定だったので、まぁぎりぎり間に合った感じ。

人を一人見送るというのがどれだけ大変かというのを日々実感する1ヶ月で、そしてもうしばらくはそれの後処理に時間がかかりそう。こればかりはしょうがない。

9月は学会1つ、研究会が1つ。実験も最低1つくらい進めることを目標にして頑張ろう。


by nt-neutron | 2016-08-31 23:33 | 研究日誌 | Comments(0)
7月中旬
3連休は論文書いたり、ボランティアの研修に出たり、病院にお見舞いに行ったり。

ORNL論文は、やや無理矢理といった感じでドラフト版を仕上げて、ボスと共同研究者の方一人に送った。
書いてみて、それにReferenceを付けながら思ったけど、hexaferriteの分野は中国・韓国のグループの仕事量が凄い。
今回の論文も、この物質のこの組成の結果としては新しいと思うのだけど、似たような組成の物質で同様の結果が出されてしまっている。仕事としてのあまり大きなインパクトは望めないだろうなぁ。

まぁ、この仕事は多少地味なものになるとしても、一歩ずつ進めなくては。
ほかにもこの夏に書くべき論文、やるべき実験もたまってるしなぁ。
by nt-neutron | 2016-07-18 23:27 | 研究日誌 | Comments(0)
7月上旬

ANSTO論文を投稿。
5月までに頑張って進めてきたかいがあって、6月にANSTOの共著者にもコメントをもらい、7月上旬に投稿することができた。とりあえず一安心。

今回はかなり高めの雑誌に出すことになったのだけど、そのために共同研究者の方に見てもらって何度も推敲したのが本当に勉強になった。上位概念から書き始めること、余分な説明はなるべくReferenceに任せて、メインの流れを強くすることなどなど。
そのおかげで、共著者全員に原稿を回してからもなかなか評判がよかった。あとはレフェリーからどう判断されるか。


この後やりたいこと、やるべきことはたくさんあるのだけど、まずはORNL論文を仕上げなくてはならない。
焦ってあちこち手をつけてばかりだと全く以て効率が悪いことは頭では分かっているものの、目の前に手っ取り早く進められそうなこと、そしてそれが誰かのリアクションに直接つながりやすいことがあると、何となくそちらに流れてしまう。

とりあえず自戒の意味も込めて書いておく。まずはORNL論文をなんとかするべし。



研究以外では、某科学館のボランティアを始めたんだった。
1ヶ月に1回程度のペースなのだけど、自分の視野を広げるには良い経験になりそう。
人とコミュニケーションを取る、特に何かを教えるというのは自分の理解を整理したり、さらに新しい情報を取り込むモチベーションにもなって良いのだけど、注意しなくてはいけないのは「教えること中毒」にならないこと。
教えている自分に酔っぱらうこと無く、客観的に、かつ見に来た人も自然に理解できて、来て良かったなと思ってもらえるのを目指したい。
と、言うのは簡単なのだけど、実際にやってみると、お客さんの理解や興味の対象は毎回違うので、その辺をさっと見極める瞬発力も必要になるんだなぁ。難しい。
by nt-neutron | 2016-07-08 23:59 | 研究日誌 | Comments(0)
気合いで乗り切った5月(&6月上旬)

5月のメインはJ-PARCでの実験だった。
1年前に続いて一軸応力中の小角散乱だったのだけど、今回はかなり準備がバタバタだった。

新しいマグネット用にインサートを作り直したのだけど、まず4月の段階でマグネットとの接続に不具合発覚。そこからいくつか部品を作り直して、同時並行で予備実験も進めて、マグネットとの接続が確認できたのが実験の10日前。。
そこから温度計の配線再チェックやら試料の最終整形などを滑り込みでやり切って本番にたどり着いた。

実験は内容的には成功だったのだけど、なかなかタフな実験だった。温度も磁場も圧力も全て手動コントロールのため、ロングスキャンがかけられない。。。これは去年の実験でもそうだったのだけど、やはり非常に辛かった。原理的には取りたいスキャンは全て可能なのだけど、6日間ずっと装置に張り付いている訳にもいかないので、どうしても「時間が稼げるスキャン」を組むことになる。これがどうしても、「どのようなデータセットで論文にするか」というところまで影響を及ぼしてしまう。。
今後せめて温度だけでもプログラマブルになるといいなぁ。。

実験にはこの4月からうちのチームに加わったロシア人ポスドクの彼も参加。PhDを取ったばかりで、僕よりずっと若い。
移動中にSheryl Crowの曲が流れてて、「この曲知ってる?僕は好きなんだよね」と話したところ「ああ、伯父さんがよく聴いてた」と言われる。そうか。。まぁSherylは僕らの世代にしたってちょっと古い趣味だけど。しかし、my uncle used to listenか。。自分が大分年寄りになってしまった気分。


帰ってきてからは、大急ぎで解析して共同研究者の方に手短に第一弾の報告をする。それから大急ぎで来期のJ-PARCのプロポーザルを書いて共同研究者の方に配布&submit。そして先月の積み残しのSPring-8の解析を進める。そして某研究会での発表、と慌ただしく過ごしていた。

しかし、最後の研究会での発表はかなり準備不足を露呈してしまった。。デバイスよりの方々が集まる研究会だったので、その分野の方にも分かりやすく、かつデバイスへもつながるような話をと心がけたつもりだったのだけど、スライドの作り込みとしゃべる練習が不十分だったため、かなりたどたどしい発表になってしまった。。しゃべりながら聴衆の顔を見ていたのだけど、興味深く頷きながら聴いて下さる方が居る一方で、全く興味を無くしてしまったように見える人も居て、なかなか難しかった。35分くらいの講演だったのだけど、分野外の人も含めて聴衆の興味をうまく惹き付けながらある程度の時間をしゃべるのは難しいなぁ。そこそこ質問が出たので、届く人には届いたかもしれない。
まぁこの経験を糧に、次にこのような機会がもらえるようだったら、もうちょっと改善できるように頑張ろう。
by nt-neutron | 2016-06-11 23:21 | 研究日誌 | Comments(0)
ANSTO

今月のメインは何と言ってもANSTOでのSANS実験だった。

今回は持ち込み機材満載の実験で、我々が出発したのは3月上旬だったのだけど、その二週間前にロックインアンプやらファンクションジェネレーターやらをたくさん輸出してあった。

予定では、僕と共同研究者のOさんが日本を発つ前に装置は現地に届いているはずで、メールでそれを確認してから安心して飛行機に乗ろうと思ったのだけど、運送業者が手間取ったのか出発前日になっても届いていなかった。正確には、オーストラリアには着いているのだけど、通関で止まっていてまだANSTOまで届いていない状態とのこと。

結局、我々の方が機材より先にANSTOに着いてしまい、あとから機材を迎え入れる形となった。
初日はとりあえず荷解きをして、試料をスティックにマウントする作業で終わってしまった。

二日目、測定機器を電源につなぐところでトラブル発生。
元々我々が持って行った変圧器(トランス)がANSTOの安全基準に微妙に適合していないということで、現地のトランスを借りたのだけど、それが240Vto115Vだった。
こちらが持って行った機器の許容電圧はおよそ100V+/- 10%ということで、ギリギリセーフか、アウトか微妙なところだった。とくにシビアなのが高速アンプで、製造元に電話して聞いてみたところ、やはり115Vは危ないだろうということで、これに関しては別途対応策を考えようということになった。

その他のものについては大丈夫だろうと考えて電源を入れていったところ、まずロックインアンプの画面が真っ暗に。。続いてマルチメーターの画面も一度ついてすぐ消えた。。。
この瞬間、悪い予感が頭をよぎり、機器の中の回路も焼けて使用不能になったかと思ったのだけど、幸いヒューズが飛んだだけで済んだ。
替えのヒューズを現地の試料環境担当のNormanに探してきてもらい、なんとか再開しようとしていたところ、この状況を見るに見かねた電気機器安全担当者のJohnが我々の持ってきた100Vトランスの電源ケーブルを改造して、ANSTOの安全基準に適合するようにしてくれた。
このトランスを使ってなんとか全ての機器が動くことを確認して、2日目は終了。

3日目にようやく本格的な電気抵抗測定を始めることができた。電極付けまで済ませた試料を抱えて飛行機に乗って持ってきたのだけど、ANSTOで抵抗を測り始めたら日本で測ったのと全く変わらない抵抗値を出してくれた。
「赤道を超えて同じ抵抗値が再現したよ」とNormanに言ったらそりゃ凄いと非常に喜んでくれた。(ただし、まだビームに当ててすらいないけど、、、)

4日目の木曜日からやっと中性子実験。
今回は薄板状の試料だったのだけど、最初にその試料の側面から入射する配置で実験を始めたいと言ったところ、装置担当者のElliotにそんな実験はcrazyだと言われてしまう。彼は基本的にsoftmatterの人なので、薄板状の容器に入れた試料を板に垂直方向の入射で実験するのが普通だと思っているみたい。ただ、ハードマターの感覚からすると、試料の形状がどうであるかなんて、試料とdetectorの距離に比べたら微々たるものだし、特に今回は吸収も殆どない試料を使っているのだから全く問題はないはず。それをなんとか説明して、とりあえずこの配置で実験を始めることを了解してもらった。

しかし、中性子の測定を始めてしばらくは全くピークが見えなかった。。
おかしいな、何か自分が致命的な勘違いをしているんじゃないか、と疑いたくなったけど、まずは一番初歩的な可能性として、試料の前に付けたCdマスクがビームを遮っているんじゃないかと考えて、試料をまわしてみましょうと提案してみる。すると案の定ωを8°くらいまわしたところでピーク発見。試料をセットした時には目の精度で1~2°の範囲にはあわせたつもりだったのだけど、マグネットに入れる時に回ってしまったか。。

この側面入射の配置でピークが見えたということでElliotとNormanは驚いたみたいだった。ただ、我々にとってはまだスタートラインでしかない。
その後、スティックの角度を再調整し、温度・磁場を最適化していよいよ本題の電流印加実験。
まずは電流を流す前のバックグラウンドとなる測定をして、その後電流印加。「まぁ一発目の測定ってのはたいていunsuccessfulになりがちだよね」などと予防線を張りつつ、SANSパターンを測定してみると、びっくりするほど明確なピークが見えていた。その瞬間、Elliotも大声を上げて喜んでくれてcontrol cabinで皆で抱き合って喜んだ。これはこれまでの中性子実験でも5本の指に入るほどの劇的な瞬間だったかもしれない。(一番はやはり5Gの偏極実験で、電場でCFAOのカイラリティが反転した時かな)

その後は大きなトラブルも無く、順調に実験が進んで途中で解析も進めることができて、非常にきれいなデータを取ることができた。
基本的には自分たちだけで測定を進めることができたので、最終日前日にはElliotが「You are really easy to work with」と言ってくれたけど、その晩遅くに、制御プログラムのちょっとしたトラブルでElliotに来てもらうことになるというオチがついた。。


ビームタイムが終わってもオフベンチで抵抗測定を続けて忙しく作業していたらElliotがあきれた顔で「まったくこいつらは働くのをやめないのか」と言っていた。まぁ僕らはこの実験のために長い間準備してきたのだから、取れるだけのデータは取っておきたいのだ。

ANSTOを去る日、午前中に装置群を日本へ送り返す手続きを済ませると、Elliotが試料の放射線チェックは自分がやっておくから物理から離れてシドニーを見てこいと言う。その言葉に甘えてまずはSymbio wildlife parkへ。コアラやカンガルーを間近に見た後、夕方からはシドニー名物オペラハウスへ。幸いに天気が良く、夕暮れ前のきれいな景色を楽しむことができた。オペラハウスの横から海に面したテラスの大きなカフェで、Oさんはビールで僕はカプチーノで(車を運転するので)乾杯。シドニー中心部の渋滞がひどくて、飛行機に間に合うか微妙だったのですぐに戻ってしまったけど、最後にちょっとだけ観光できたことを伝えるとElliotも「君らは少なくともシドニーの一部を味わったね」と喜んでくれた。


さて、実験がうまく行ったので次は論文。競争が激しい分野なので、できるだけ早く投稿まで持って行けるようにしたい。
また書くべきものがたまってきたな。。。
by nt-neutron | 2016-03-30 23:49 | 研究日誌 | Comments(0)
2月

2月は電気抵抗測定の1ヶ月だった。
3月のANSTOでの実験に向けての予備実験なのだけど、今回は中性子と電気抵抗の同時測定なので、実際に中性子に使う試料を使って、こちらでできることはやっておこうというのが狙い。
しかも今回は単純に抵抗の温度磁場依存性を測るだけでなく、トリッキーな測定をする予定なので同じ現象が中性子用のサンプルで再現するかが非常に重要になってくる。

1ヶ月間、試料を切り出しては電極を付けて測るということを繰り返して、正直なところ全く予定通りには行っていないのだけど、やればやった分だけ新しいことが分かって予備実験をやったかいがあったなという実感がある。
ただ、本番の実験が失敗してしまっては意味が無いので、最後まで気を引き締めて行かないと。

それと、今回のANSTO実験にはかなりの量の持ち込み機材を使う予定で、その輸出手続き及びペーパーワークにも相当の労力を要した。とりあえず荷物は今頃海を渡っているはずなのだけど、、、現地で現物を見るまで不安だ。


それと最後の不安はシドニーでレンタカーを借りてのANSTOまでのドライブ。
Oak Ridgeみたいな田舎じゃなくてシドニーだからなぁ。。前に行ったときもタクシーの運ちゃんが怒鳴りあってたし、、まぁとにかく安全運転で行くことにしよう。
by nt-neutron | 2016-02-29 23:50 | 研究日誌 | Comments(0)
Berlin

2016年最初の中性子実験はBerlinでの磁場中回折実験だった。
実験の狙いは割と単純で、相図上をひたすら走り回るだけなのだけど、かなりトリッキーな散乱面を選んだ上に14.5TマグネットとDy-boosterを組み合わせての実験だったので、専用のサンプルホルダーを準備してかなり気合いを入れてalignmentをしてきた。
そのかいあって反射もすぐに見つかって、このまま楽に行けそう、、と思ったのが甘かった。その後はトラブルの連続だった。

まず、マグネットの電源ユニットが突然制御不能になった。10Tへ磁場を上げている最中だったのだけど、しょうがないので電源を落として、試料環境スタッフの人が来てマグネットの電流をマニュアルで抜きましょうということになった。彼らはcontrolled quenchと言っていたけど、controlledとはいえどうしてもマグネットは暖まってしまうので、最高磁場はしばらくお預けで低磁場領域を先に測ることにした。

この問題が起きたのが木曜。その後装置担当者のKarelと話していたら「今週末はうちで”セカンド・クリスマス”をやるんだよね」という話が出てきた。なんでも、子ども達のために1月の土曜にもう一回クリスマスをやるんだそうだ。
「外出しても空いてるし、食べ物もおもちゃも安いし、まだ雪も残ってるし、いいことずくめだから」とのこと。家族サービスのネタとしてはなかなか良いアイディアかもしれない。
「子ども達はどう説明するの?まだサンタを信じてるんでしょ?」と聞いたところ「サンタのdutyは最初のクリスマスだけ、セカンドクリスマスは両親が開くイベントと子ども達にも説明してる」のだそうだ。なるほど。


で、その土曜日にトラブルが起こってしまう。冷却中に急にピークが見えなくなり、周囲を探せども核反射すら出てこない。
こんな時WISHみたいなTOF装置だったら一瞬で見つかるのになぁと思いながらも、元あった位置からプラマイ50°探してやはり見つからず。
これは試料が落ちた可能性もあるなと思ってスティックを抜くことを覚悟してKarelに電話をかける。電話で相談したところ、やはりスティックを抜くにはKarelが来た方が良いのだけど、今日はもう酒を飲んでしまったので行けないとのこと。。そうだよね。2nd クリスマスって言ってたしね。
とりあえず対処するのは明日以降になるかなと思って360°のω scanを仕掛けてみたところ、なんと元あった位置から90°ずれたところ核反射を発見。あとあと起こったことと合わせて考えてみると、この時既に試料スペースには多少空気が入っていて、それが原因で試料が側面とくっつきかかって、ωをまわしたときに試料が摩擦を受けて回ってしまったのだと思われる。
一度反射を見つけた後、しばらくその周りをスキャンしてみると再現性も良く実験続行できそうなので、Karelにまた電話をかけて「このまま続けてみるよ、メリークリスマス!」と伝える。。


そこから月曜までは順調に行ったのだけど、Karelはその後風邪を引いてしまって寝込んでしまい、戦線離脱。
そして火曜日にまた反射を見失う。しかも今度は試料スペースの圧力も上がっているし、本格的に大気が流入しているっぽい。案の定、温度を上げようとすると77K付近で一度止まるので、窒素が入っていることはほぼ確定的か。。
試料環境チームの人に来てみてもらったものの、結局リーク場所は特定できないということで、定期的にサンプルスペースを真空引きしながらだましだまし実験続行することになった。



そんな感じでけっこうぼろぼろだったのだけど、一度反射が見つかってしまえばその後の中性子の測定はスムーズに行って、さらにDy-boosterを使わないと到達できない17Tまでの磁気散乱測定がとてもうまく行った。試料環境がばっちりでも、肝心のデータが全く面白くないということは往々にしてあるのだけど、今回は嬉しいことに苦しい環境の中でもデータだけは面白いものが取れたので良かった。


帰ったらもう2月。次なる山場のANSTO実験へ向けて準備を進める月になりそう。
by nt-neutron | 2016-01-29 23:44 | 研究日誌 | Comments(0)


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某私大で助教を4年間勤めたあと、現在はR研でポスドク。専門は磁性・中性子散乱。
by nt-neutron
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